私は月をながめ

中野重治:1902~79福井 私は月をながめお前のことを考える私はお前に逢いたい月は中空にあんなに光っているそ…

中野重治:1902~79福井

私は月をながめ
お前のことを考える
私はお前に逢いたい
月は中空にあんなに光っている
そして私は思い出す
私の足の下を掘ってゆくならばお前の國へ出るということを
私の足の下にお前はさかしまになって歩いている
お前と私とはおなじ月を眺めることができない
雲のない満月も赤い月蝕もひとつも見られない
月の光もお前と私とを一しょに照らすことはようしない
対しょのくに
何という遠方だろう
私は月をながめ私はお前に逢いたいのである

1件のフィードバック

  1. 成田悦子 のアバター
    成田悦子

    月を見る時は何時も兎が餅つきをしているかどうか確かめました。今でも確かめます。月は地球を持て余し始めているようで、夜、太陽の光が漏れます。地球は私がいる所で、そこを掘ると貴方はいるかも知れないが、彼がそうであったように考えるだけで、実際に掘ったりはしない。しかしいつの間にか実際に掘る人々が登場し、私たち人間は行き場所を失くしたような気がする。勿論もう決して貴方には逢えないのである。もしかしたらいつの間にか彼は掘って地球の裏側に行こうとする人になっているかも知れない。

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